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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)12812号 判決 1969年10月21日

被告 医療金融公庫

理由

一  原告主張(1)(2)の事実のうち、被告の業務および債権譲渡に関する事実および(3)の事実のうち債権譲渡通知の到達並びに(4)の事実のうち(イ)、(ロ)、(ハ)の各債権の各支払期日は当事者間に争いがない。

二  《証拠》を総合すると、次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

(1)  花輪元三は花輪病院の代表者として昭和四三年一月一七日頃から同年一〇月二〇日頃まで同病院の経営に当つていたが、同病院は被告に対し総額約金四、五〇〇万円位の債務があつたため、その支払いに充てるべく、原告主張の如く花輪病院の支払基金に対する債権のうち、昭和四三年五月分から同四四年三月分までの分を、被告に譲渡したが(この点は当事者間に争いがない。)、同病院は別途原告から融資を受けるに当り、昭和四三年九月上旬頃原告主張(3)記載のとおり、昭和四三年七月分から同四四年三月分の余剰金返還請求権を原告に譲渡したこと。

(2)  右債権譲渡につき、花輪元三は花輪病院代表者として、その法律的手続を昭和四三年九月上旬頃、弁護士浜田正義に委任したため、これに基き同弁護士は昭和四三年九月三日付をもつて、「昭和四三年三月七日(二七日は誤記と認める。)付をもつて花輪病院と被告との間になされた、右病院の支払基金に対する社会保険診療報酬債権の債権譲渡契約第二条に基き右病院が被告から返還を受くべき余剰金債権のうち昭和四三年七月分から同四四年四月分までの分を原告に譲渡したから、直接原告に支払うべき旨」の債権譲渡通知書(甲第一号証)を作成し、同日これを内容証明郵便として被告あて発信したこと。

(3)  然しその後花輪元三は、右に基く原告の被告に対する譲受債権支払請求に対し被告が右(2)の譲渡通知書によつては支払えないとして、その支払いを拒否している旨を聞いたので、更めて昭和四三年一〇月一九日付をもつて、「前記(2)同旨および余剰金債権昭和四三年七月分金一、三二五、五二五円を至急支払うこと、同八月分金一、一二七、九四二円を同年一〇月末日限り、同九月分金一、五八三、二四三円を同年一一月末日限り、いずれも原告に支払うべき旨並びに同年一〇月分以降昭和四四年四月分についても各履行期到来次第原告に支払うべき旨」の書面(甲第二号証)を作成し、同月二一日内容証明郵便をもつて発信したが、右書面は確定債権額を明らかにする趣旨であり右(2)の通知を無効視したことに由来するものではないこと。

(4)  右(3)に記載した各月の余剰金債権額は、その後の調査によると計算誤りであり、原告主張(3)、(イ)、(ロ)、(ハ)記載の額が正当であること。

三  債権は原則として譲渡性を有するが、債権譲渡が有効であるためには、譲渡の目的たる債権が存在し、かつそれが特定していることが必要であるが、必ずしもその債権の内容が確定していることを要するものではなく、何らかの事情で金額の増減しうる債権であつても、客観的に譲渡の目的として確定しうるものであれば譲渡は可能であるところ、前認定(1)、(4)の原告の譲受債権は、花輪病院の支払基金に対する昭和四三年五月分から同四四年三月分までの毎月の社会保険診療報酬受領債権額から、花輪病院の被告に対する債務のうち当該月に支払うべき債務額および利息額を控除した残額である余剰金につき、右病院が被告に対して有する返還請求権であるから、右債権は特定しうるのみでなく、客観的に譲渡の目的として確定しうるものであるからかかる債権の譲渡は法律上有効になしうるものである。従つて、前認定(1)、(4)の債権譲渡は有効であり、また債権譲渡の通知は特定の債権が特定の譲受人に譲渡された旨の事実が表示されており、かつ通知人代理人が通知につき適法な代理権を有すれば足りるから、必しも確定債権額の記載を要するものではなく、また代理権を証する書面を添付する必要もないから前記認定(2)の債権譲渡通知も有効というべきである。

四  そうすると右債権譲渡通知の被告に対する到達および右各債権の各支払期日については当事者間に争いがないから、右債権額およびこれに対する各支払期日の翌日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める原告の本訴請求は正当であるからこれを認容

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